何と言っても正代旋風に尽きる10日間。時間がないので纏まりのない文章となり恐縮ですが、以下、現状できる限りの考察です。

正代 9-1
「立ち合いが強いので、立合いからの流れで取れている」というのは6日目伊勢ヶ濱親方による解説。
これまでは当たりが高い分、どうしても左を差して相手を起こすまでの間に一手間がかかるので、その隙を突いて、おっつけるなり極めるなり突き放すなりの反撃に出られていましたが、今場所はそうしたギャップなく左からの攻めを繰り出せている。
差し込んでから相手を揺り起こし寄り詰めていく際の肩の寄せ・足の送りは元来定評のあるところでしたから、立合いで素早く相手を起こすことさえ出来れば、自ずと全体の流れも良くなっていく。まあ、つまりはそういうことなのでしょう。

ただ、この書き方だと大事な疑問に対する答えが出てこない。そう、一番知りたいのはなぜ「立合いが強くなった」のか。この点が分からないと「変身」の本質もぼんやりしたままになってしまうのではないかと思っています。
筆者が見た限りでは、従来上で当たって調節してから下が追いついてくるようなイメージだったのが、今は体全体でぶつかっていく感じに変わったんじゃないかなと。上下が寸断されず連動して動くことが立合いの強化のみならず、二の矢でのスムーズな攻勢にも結びついているのではないか…
すなわち「立ち合いが強いので、立合いからの流れで取れている」ということですね。
これ自体、今場所から始めたというよりは数場所前から(3-12で終わった昨秋ですら)やろうとはしているように見えるので、「特に変えたところはないんですよ」という本人のコメントも本心である可能性が高い。もしかしたら、ずいぶんと家賃の安かった先場所が良い肩慣らしなり試作期間になったのかもしれませんね。



・・・で、貴景勝戦の立合い勝ちによって「いよいよとんでもない馬力になったぞ」と周知され尽くした分、今後(来場所以降も含め)は対戦相手も正面衝突を避けるべく色々と策を練ってくるでしょう。
今日の松鳳山は、呼吸も立つ位置もずらして立ったので正代は立ち遅れて受け太刀、今場所で一番悪い立合いになってしまいました。
明日の大栄翔に関しては真っ向勝負型な上、自分の呼吸でいけるので立ちやすく、左四つにも引き込みやすい相手なのですが、過去2度その左四つになって攻め急いだところを逆転されているだけに、組み止めた後の対処を間違えないこと。引っ張り込んでから慌てずに腰を据えていれば、そうそう負けることはないと思うのですが…

11日目の取組
2正代×××●××大栄翔3


德勝龍 9-1
いやはやベテラン素晴らしいですね。左四つの重厚な寄り身・柔らかく身をこなしての逆転技・タイミングをはかって押しつぶすような突き落とし・立合いとったりの奇襲と、これまでに積み重ねてきた経験と技術がすべて詰め込まれたかのような魅惑の10日間。
コース料理としては既に十分すぎるボリュームですが、どうせなら涙の初三賞という最高の彩りを添えてほしいもの。
明日は碧山戦。相手の調子も良くはないので一気に攻められることはなさそうだし、あとは突く手を跳ね上げながら密着を狙う中で引き・叩きの間合いになった際、的確に足を送って凌ぎきれるか。
あるいは、張り差しで左四つに引っ張り込めれば安全に勝てる見込みは高まるので、その方向性も?
お互い立ち合いの変化技を持っていることも付記しておく。

11日目の取組
1德勝龍××××××碧山4




貴景勝 8-2
クレバーな取り口で勝ち星を重ねてはいるが、やはり昨秋のような出足・爆発力はなく、先場所敗れている宝富士との11日目はやや不安。押し上げが効かずに受け止められたとき、前への比重を高めんとするあまり上体だけ突っ込んでいなされる先場所の再現とならないか…

11日目の取組
3貴景勝×××××●宝富士2