玉ノ井部屋

<所属年寄・裏方一覧>
師匠 玉ノ井(元大関・栃東)
行司 木村行宏(十両格行司)
呼出 駿佑(幕下呼出)
床山 床塚(二等床山)
床山 床玉(五等床山)
世話人 大日岳(元十両・大日岳)


<近況>
・30年春三段目格付出の白石が1年足らずで幕下15枚目以内へ。次の1年に昇進をかける。
・白石効果は他の幕下力士に波及。ベテラン富士東は3年ぶりの十両返り咲きを決め(2年夏新番付)、一木は同じく3年ぶりとなる最高位更新で自身初の15枚目以内へ。



・主な注目力士
白石(生年:平成8年 出身:東京 身長:181センチ 体重:125キロ
専大松戸高ー東洋大を経て、31年夏三段目格付出で初土俵。いきなり三段目優勝を果たすと、幕下昇進後も5-4-6と勝って、2年初場所で初の15枚目以内進出。2-5と跳ね返されるも、翌場所6-1とすぐさま挽回して、夏場所新番付は初場所の地位をさらに更新する西10枚目となっている。

もろ手突きからの小気味良い突っ張りとタイミング良い叩き・いなしが持ち味。右差し左上手の体勢になれば、前に圧力をかけつつ首を押さえての豪快な上手投げを決めるあたり、(得意四つは反対ながら)背格好の近さも含め若い頃の松鳳山を思い起こさせる。

こういうある種感覚的な相撲を取る人は、どうしても調子の波が生じやすいので、勝っているときは自在に相手を翻弄しているように見えるし、負けているときは空回りして自滅するばかりの印象を与えがちなもの。
そういうムラっ気を克服する方法があるとすれば、やはり立ち合いの強化。生命線とも言うべきもろ手突きに相手の腰を崩すほどの威力をつけられれば、自ずと二の矢以降の攻めにも再現性が現れやすい。体力的にもまだまだ大きくなりそうで、今後の順調なパワーアップが期待できそうだ。


一木(生年:平成5年 出身:佐賀 身長:171センチ 体重:115キロ)
希望が丘高ー九州情報大。28年初場所の初土俵から負け越しなしで幕下上位(西16枚目)へと進んだ後は出世が止まっていたが、元年下半期以降、白石の台頭に刺激を受けるかのごとく再上昇。2年初・春と連続で5勝して、夏場所新番付では3年ぶりの自己最高位更新&初の15枚目以内進出を果たした。

取り口としては、舞の海とか里山、炎鵬らに代表される食い下がり型の小兵というよりは、押しを基本に、前後左右への素早い動きで崩しにかかるタイプで、現役力士の中では翔猿に近い。
翔猿との差を考えるなら、(前略)翔猿がなるべく形を崩さないよう(幕下時代の個別特集では形状記憶力と記しました)前傾でしつこく頭から当たっていくことによって相手に根負けを強いるのに対し、一木はやや余分が動きが多く、寧ろつけ入る隙を与えやすい感がある。
と書いたのが前年度分で、まさにこの点を改善しつつあるのが最近の土俵。余分な動きが減少し、最小限の崩しで相手を揺さぶるや、ハズにかかり前へ前へと押し上げていく勝ち味が増加している。

もう一つの得意技である右への変わり身については、春場所5番目の朝弁慶戦、仕切り線から離れ目に仕切り、頭を下げて当たろうとする相手の特徴を見透かしたかのような早い立ち→一つ突いてからの変化で翻弄した内容など、確かに理に適った仕掛けではあるのだが、続く6番目・7番目の相撲でも右への変化を模索して付け入られたあたり、やはり乱用してしまうと自分の相撲そのものを崩してしまうようだ。
サイズ的にも、立合いで奇襲を活用すること自体に何ら臆する必要はない。しかし、同時に本場所の中で勘を鈍らせてしまわないよう、自分なりの最適なバランスを構築しておくことも不可欠となるのだろう。



大兵巨東(H2 福島 198 151)は若手時代再三苦しめられた故障を乗り越え、28歳にして幕下30枚目の自己最高位を記録(30年名古屋)。およそ1年後の元年9月にも同位置へと返り咲いているが、肩越しの上手で振り回す取り口に目立った変化は見られず、これ以上となるとどうか…
同じ超級の長身力士である兄弟子の芳東は、30歳を越えて全盛期を築いた時期、立合い必ず一つ頭で当たって先手を取っていただけに、巨東も同じことが出来るかはともかく、何か受けに回らぬための手立てを見出したい。
その巨東より25センチほど低い東里(H4 東京 172 127)も27年の新幕下以降、概ね幕下下位~三段目上位での土俵が続いている。前傾で顎を上げず相手の突きを宛てがいながら反撃に転じようとする取り口は、現在の部屋において師匠にもっとも近いのだが、ここのところは左ふくらはぎのテーピングが痛々しく体調十分とは言えない中での闘いを強いられているようだ。

長らく膝の怪我に苦しんできた清乃海(H8 長野 181 188)は入門からおよそ5年のタイミングで2年初場所新幕下も、場所前に蜂窩織炎の症状が出て無念の大敗。
2年春、最後の一番に敗れて逃がすも、28歳にして幕下目前の東翔(H3早 175 185)、2年初場所で三段目一桁枚数を記録した東照山(H10早 182 153)も着実に力をつけて、部屋全体の底上げに貢献している。


このほか、31年初場所新三段目の石東(H10 宮城 165 117)は四股名の通り、石のように跳ね回る元気者の相撲っぷりで面白い存在だが、ここ1年ほど低迷。
津軽海(H8 千葉 175 105)は、春日野部屋の元十両、引退後には若者頭として先代玉ノ井の育成にも携わった祖父の四股名を受け継いでいるが、軽量で膝や肩など怪我が多く、30年名古屋では6年以上かかって辿り着いた幕下目前の自己最高位でまたも膝の大怪我に見舞われてしまった。翌年初場所の復帰以降、またコツコツと番付を戻しており、個人的にもなんとか幕下に上げてやりたいと祈るような心境で見守っている。





創設以来の概略については昨年度分の記事を参照。 
玉ノ井部屋の次回コラムは来年(令和3年)分の記事にて行うこととします。