好戦が非常に多かったので、ずいぶん時間がかかってしまいました。序盤のうちから上位に全勝がいないとか何とか言って優勝争いや星勘定に一喜一憂せず、一番一番の濃い中身を味わい尽くしたいものですね。

※実際の東西を問わず、勝者を左に記載する。


幕下
3-0夢道鵬(寄り切り)德之武蔵2-1
ホープ対決。ともに左四つも夢道鵬は先に左の廻しを引きたい、德之武蔵は両差しになりたいという取り口なので、夢道鵬が左の上手を引く格好になるのは自然といえば自然な着地か。
夢道鵬が良かったのは右の使い方。二本差されてしまってはひとたまりもありませんでしたが、右足で踏み込んでの右外ハズから右を差し勝ち、得意とは反対の四つながら返しも効いていた。德之武蔵が苦し紛れの巻き替えに来るところを定石通り詰める際の右おっつけも厳しく、危なげのない相撲で3連勝を飾っています。


幕内
4-1琴勝峰(寄り切り)志摩ノ海2-3
以前も少し書きましたが、右が僅かに覗いているだけの格好にも関わらず、左おっつけと併せて腰の重い志摩を根こそぎ運んでしまう推進力は驚異的。
魁聖戦のように相四つ相手に右半身で振り回すだけではつまらないですが、前に出ながら右を差して突きつける技術を発揮できるようになれば武蔵丸の再来にも伸びうる。


2-3琴恵光(寄り倒し)翔猿4-1
翔猿先手をとってよく攻め、前後の動きも使いながら盛んに飛び込んでの右差しを狙うも、琴恵光慌てず内から内から手を出して中に入れず。一度、土俵中央で決定機とも言える差され方をしたときにも、反対の手を使って突き放す教科書どおりの手順。そこからの流れで土俵際まで押し込まれるも、まだ余裕があった。このあたりから徐々に逆襲。
前に圧力をかけながら空間を作っておいての右差しを果たすと、翔猿我慢しきれず左で深い上手を引こうとしてしかも果たせず、これが敗着。琴恵光に得意の右からしっかりと揺り起こされては、窮余の突き落としも体を開き得ず、最後はやや心配な形に左膝を折り曲げながら崩れ落ちた。
両者の熾烈な前捌きの応酬、白熱の攻防。翔猿に大きな怪我がないことを祈りたい。


2-3栃ノ心(掛け投げ)髙安3-2
あんなに低い踏み込みで良い位置の右前廻しを引く髙安をあまり見た記憶がありません。できればその右を引っ張り込ませて右四つ左上手の体勢に食い下がりたいところでしたが、もろ差しで却って窮屈になってしまったか。それでも、相手はもう右からの小手投げ以外に手段がない状況、足を内側に入れて打ち返す機を待てばよかったのだけど、分かっていても喰ってしまうことはあるということか。
しかし、髙安にとっては、収穫多き敗戦。あくまで「相撲には勝っていた」と割り切りたいものです。


3-2遠藤(寄り切り)隠岐の海1-4
この日随一の熱戦。展開としてはいつもの左四つ、右で上手を引ければ遠藤有利の構図なのですが、この日は隠岐の海の当たり鋭く上体が起きてしまったこと、さらに隠岐の海の右上手が一枚で切れなかったことから食いつく形に持ち込めず、左下手も邪魔で合わせ技のように(遠藤から見て)下手側に振られるので攻めきれない。
何度目かの攻勢となったとき、また隠岐が振ってくるところ、対応すべく一寸外掛けっぽいことをしようとしたために腰が浮き、重心が(自分の)上手側に寄った一瞬を突かれる。貴ノ浪のように一腰入れて体を入れ替えんとする隠岐の仕掛けに、遠藤右足が大きく上がり、ぐらつきながら左足一本で踏み堪える劣勢。完全に決まったかに見えましたが、これを残すのが遠藤という力士の真骨頂。決めきれず踵重心になった隠岐の乱れを逃さず反転攻勢へと切り替える判断も好く、こうなっては隠岐の堅城も崩れるのを待つばかりでした。



4-1正代(押し出し)北勝富士1-4
左踏み込み左ハズのコンボがハマれば、今の正代は誰よりも強い。先場所6度目の対戦で初めて敗れた相手を寄せ付けず、連敗を回避。


3-2照ノ富士(寄り切り)大栄翔1-4
怪我をする前の照ノ富士にこんな相撲のレパートリーはなかった。左足を前に出した前傾姿勢で膝がよく曲がり、大栄翔の突きを跳ね上げていく。下から下からの攻めで抱きついた後は、腰を前に出し、足を細く前に配ってブリブリと前へ。
大栄翔も引っ張り込まれた左をさっと抜き、相手の頭を押さえながら右へ回っての突き落としに持ち込む判断の素早さは流石で、喰ったかと思ったのですが、足運びの確かさに加え、左からの返しも効いていたので、大栄翔はわずかに体を廻しきることができませんでした。
2日間の出遅れこそあったものの、照ノ富士の強さが上位の土俵でもいよいよ本領を発揮しようとしています。


4-1貴景勝(押し出し)妙義龍3-2
過去9戦未勝利の貴景勝に対し、妙義龍はいつもの右差しではなく両手突きを選択。距離を取ってから差すくらいの狙いだったのかもしれませんが、貴少しも慌てず上ずった妙義龍の右を左ハズで押し上げ、攻勢を握る。よく視ながらの突きで終始相手を正面に見据え続け、難なく押し出し。
荒磯親方が言う「四つ相撲のような押し」の代表作のような安定感ある相撲内容でした。




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