幕下以下を見る上で、随所に全勝対決の配置される9日目が、個人的には一番好きな日程だったりします。春場所の現地観戦も9日目がめちゃくちゃ多いので(笑)
今日もそんな味わいを堪能できる一日でした。


5-0石崎(押し出し)菅野4-1
立ち合い1度不成立で、今場所の石崎は5番中4番で1度目の呼吸合わず。まだデビュー3場所目なので酷な面もありますが、この呼吸具合は徐々に直していってほしいところです。

さて、菅野は石崎対策を十分に練ってきたらしい。立ち合い、相手の左前廻し狙いに対し、左で起こしつつ右を抜いてかっぱじき、次いで突き落とし気味に胴のあたりを押さえつければ、石崎大きく泳ぎ、勝負あったかに見えましたが、これを残してしまう復元力には舌を巻くばかり。
菅野、ならばと右を返して起こしにかかるも、石崎素早く左を巻き替え、そのまま鉈のように肘を使って距離を取り、一つ突き起こしてから左→右と前廻しを探って食い下がりにかかる。菅野、すかさず両側から極めんとするのですが、これに対する石崎の対処(左手の動き)が面白かった。
すなわち、前廻しを掴むため上に向けていた掌を、廻しを離しながら返して甲の側を上に。肘をぶつけるような具合で下からじわじわと押し上げていくので、菅野は極め上げが効かないどころか、逆に自分が圧迫されて苦しく、たまらず合掌を解いて打開を図りますが、こういうときにリーチを生かして左で上手を求めようとする動きも、対戦経験豊富な石崎には見透かされている。許さじとばかり右を返され、たまらず反対に切り替えるも、これも左のハズと突きつけを混合するような押しの前に無効化されて決着。石崎のこうした手順に、足の送り・腰の寄せが滞りなく伴っていたことも忘れずに付け加えておきたい。

それにしても、ロックされた手をああいう風にして解錠するのか・・・というのは、新鮮な驚きで感心しきりでした。どんな状況に陥っても打つ手が一々的確で、そういう臨機応変な部分も、この力士の相撲を見る上での大きな楽しみになっています。



5-0北の若(送り倒し)對馬洋4-1
前日分の記事では、對馬洋の右と北の若の左の攻防を見どころに挙げておきました。
いざ立ち合い、変則的な立ちをした前場所とのギャップも狙ってか、迷いなく突き刺さってきた對馬洋に対し、北の若は王輝戦同様、小さく一歩踏み込む形で難なく受け止めると、左おっつけから左を差し勝ち、引っ張り込んだ右も上手廻し。
對馬洋は右を差し負けた際の常套手である右からの強引な投げ、北の若の上手を切りながら向正面側に回って振り回しにかかるも、北の若は承知ばかりに左足を對馬洋の進路に先回りさせ、左膝を相手の右膝裏へ切り返し気味にぶつける。對馬洋、その足を跳ね上げて掛け投げを目論むも、北の若外掛け気味に返して揺るがず、最後はバランスを崩した對馬洋を送り倒しに仕留めました。

前日分で天空海の掛け投げについて取り上げた際、腰の捻りが必要な理由(の一つ)について、「相手の外掛けを封じるため」と書きましたが、奇しくもこの一番で「捻りが足りないとどうなるか」の実例が示されましたね。
對馬洋としては、従来的な欠点を晒す負けになってしまいましたが、この取組に関しては、相手が悪すぎたかなという気もします。それくらい北の若がハッキリと化けましたね。



4-1寺沢(叩き込み)琴裕将3-2
関取昇進をかける大きな一番でしたが、寺沢は落ち着いていました。
実況は「呼び込んだ」と表現していましたが、それは違う。立ち合い多少高くても良いので強く弾き、相手が上体を前に倒すところを間髪入れずに手先で引いて、しめたと出てくるハナをさらに左で叩き(首を押さえ)、右でもおっつけ(外ハズ)を効かせながら、最初にできた空間を利用して右(正面側)へ体を廻していく、見事な戦法でした。
琴裕将のように体が硬く、支えるものがなくなると脆い力士には、こういう多段階式の叩きが絶妙の一手になる。本人も「次の流れをイメージしていた」と述懐したとおり、完全に仕込まれた動きでしたから、これを呼び込んだなどと解釈するのは可哀想というものです。

相手を研究して大胆に仕掛ける、実に寺沢らしい相撲で勝ち越しを決め、佐渡島出身としては大錦以来の関取誕生が濃厚に。ここから2番は来場所の番付をどこまで引き上げられるかの戦い、気を緩めることなく星を積み重ねてほしいものです。





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