ついに優勝争いは2人に絞られました。まずは大栄翔2敗死守の一番を見ていくこととしましょう。


12-2大栄翔(突き倒し)翠富士10-4
展望記事でひとつ書き忘れていたのが、手着きの先後の問題。大栄翔は9割以上が先に手を着いて待つ仕切りなのですが、翠富士戦については、初顔のとき先に手を着かれて、後から出たところを立合い変化。前回は一転、翠富士が自分から手を着かず、睨み合いの後、大栄翔が先に着いていく形でした。

その2回を踏まえての今日、翠富士は先に手を着いてきた。採った作戦は、初顔の変化とまっすぐ突っ込んだ2回目の折衷とも言える、踏み込みながら左へずれての引き落とし狙いでした。大栄翔が過去2回の経緯に迷い、「見るような出るような」で曖昧にもろ手を出してくることを想定したのではないかと思うし、個人的には「積極的な奇襲」とでも呼ぶべき、良い狙いだったと思う。
また、先に手を着く理由については、相手に後から手を着かせることで引き落としがハマりやすくなるから。後から手を着いてモロ手でいく場合、(まして、相手が小さい翠富士という点も作用し)どうしても力の向きが上から下になりやすいんですよね。そこを払い落とせば初顔のときのようにバタッと前へ落ちてくれる、翠富士はそう計算していたのでしょう。

ただ、この翠富士の手着きは、ひょっとすると大栄翔に「何かしらケレンがあるな」と感づかせる原因になったかもしれない。その立合いは、左右への変化も含めて警戒を払うためか、完全に「見ていく」出方。手着きも右をこする程度に下ろし、左は下ろさずに立つという真面目な大栄翔にしては異例の省略系を採っています(だから、行司側の手着き不十分を玉治郎が咎めてもおかしくはなかった)。

加えて、今場所の大栄翔に顕著な手の使い方。この2日の記事で筆者は「四つ相撲のよう」と書いてきたのですが、今日の解説・鶴竜親方がより具体的な指摘をしていました。曰く
「今場所は見ていって、手がもろに前に出るんじゃなくて、下からあてがって押して行ってますもんね」とのこと。
これを聞いて、なるほどますます四つ相撲じゃないかと。上体は起き加減、むしろ相手に突かれて上体がのけぞるようになっても腰がブレず、下からの攻めで相手の上体を起こしていく。起こした後の突き押し、その威力は正真正銘の「馬力相撲」ですが、さりとてバランス良く左右の手を使って相手を正面に据えつけ、腰を伸ばして勝負をつける相撲の型は、両廻しを引きつけ、胸を合わせ、がぶって土俵際に寄り詰めていく四つ身の王道と大きく異ならないような安定性を感じさせます。
結果的に、この3日の決まり手が「突き出し、突き出し、突き倒し」となっているので、そういう性質とは対極の印象を与えるかもしれませんが、少なくとも、筆者の中では「四つ相撲のような突き押し」のワードが脳内を埋め尽くしています(笑)


さて、取組のその後に触れていくと、大栄翔のもろ手が来てくれず、はたき落とす動きが不発に終わった翠富士は、体の動きが下から上に向いており、足も揃い加減。そこへワンテンポ遅れた大栄翔の突きが見舞われる。たちまち喉元にヒットした手がぐいと伸びるや回転しながら左右の腕が伸び、足を伴った頭からのかましで低く当たり直してくる猛攻の前に翠富士は防戦一方。右からのいなし、西に追い込まれながらの引きも実らず、突き倒されて白房に崩れ落ちた。
初優勝を目指す翠富士の夢路はここに潰えたものの、今場所随一の立役者に精一杯の拍手を贈りたいし、明日開催される三賞選考委員会は、敢闘賞、もしくは技能賞をもって、その活躍に報いてほしいと願います。


一方の大栄翔は、2度目の賜杯に王手をかけていざ楽日決戦へ。明日の大一番に向けた展望は、昨日同様、明朝更新の展望記事にて・・・といたします。








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