土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

2014年07月

では、3日遅れですが、千穐楽分です。来場所は、もっと1日あたりの分量を増やせる予定なので、またよろしくお願いします。

 
幕内
○12-3豪栄道(寄り切り)琴奨菊12-3●
豪栄道も緊張してなくはなかったのでしょうけど、それにも増して琴奨菊は前日から一転、控えに入る辺りから見るからにガチガチ。1度合わずに琴奨菊が突っかけると、2度目は立合いで右を差しに、左は前廻しという豪栄道と同じ形を作りに行く。どっち四つでも胸が合えば有利ですから、相手の持ち味である右の差し手を殺すために、前廻しを狙いながら、届かないのなら絞って前に出ていくようなイメージだったのか。
しかし、豪栄道の鋭い右肩からの踏み込みに上体が起きてしまったのがすべて。左側の狙いは不成就となり、逆に相手に左からおっつけながらの上手を許し、右半身。豪栄道の上手もやや深い位置だったので、下手から振って切りに行こうとするも実らず、逆にそこを出し投げで崩され、あとは防戦一方。元来合口の悪い豪栄道に頭から尻尾まで満点の相撲を取られては抗いようもなく、初優勝が大きく遠のく痛恨の3敗目を喫した。


○13-2白鵬(上手出し投げ)日馬富士10-5●
日馬富士は全部北の富士さんが言った通りだと思うのですが、右の差し手も前ミツ浅い位置を取るチャンスはあったし、前日分と同じようなことを書きますが、頭を付けて、出し投げで腰を落ち着けさせず、嫌がって焦れて強引な動きに出るのを誘発するような展開を求めたかった。
白鵬は勝因を「(負けた2番とは違い)攻め急がず、強引な技に行かなかったこと」と挙げていましたが、 あくまで相手の攻めや相手の型になるのが嫌で辛抱しきれないからこそ攻め急ぐわけで、とすれば白鵬が攻め急がなかったことの理由は、逆に相手に攻め急がせるだけの嫌らしさや怖さがなかったということ。
つまるところ、この日の日馬富士にそれだけの相撲をやってのけるスタミナや気力が残っていなかったということなのでしょうね。 

とはいえ、14日目の切り返すようにしながら相手の逃げ場をなくすような詰めといい、そしてこの日の教科書通り下に打ちつける出し投げといい、基本技術の秀抜さが今なお白鵬をダントツの第一人者たらしめている最大の原因であることをまざまざと教えてくれますし、そのこと自体は全力士が大いに見習い、精進していってもらいたいと願っています。

では、大急ぎで本場所残り分を消化させていきます。

幕内
○11-3豪栄道(寄り切り)照ノ富士8-6●
まず土俵に上がる姿を一目見て驚いたのがやはり左膝のサポーター。12日目の日馬富士戦で痛め、場所後師匠によって半月板損傷の疑いがあることを明かされたわけですが、この日の相手はどういうコンディションであれ強く踏み込んで中に入り、食い下がっていく形を作っていくことに尽きるわけですから、元来得意なタイプということもあいまって、寧ろ迷わずそういう相撲に徹せられる要因となったのかもしれない(そして、これはひょっとすれば「綱」を見据えた向こう数場所の土俵に関しても、最大のポイントになるのかも)。
出足鋭く右を差し込み、抱えた左から小手投げに来られたところは危なかったですが、とっさに上手を掴みかけていた左手で相手の脚を抑えに行って対応。すかさず良い位置の上手に持ち替えて、相手の右を殺すと、たまらず差し手を抜き上手を狙いに来るのも右からの下手投げで嫌う。照ノ富士、ならばと右を再度覗かせに行くも盤石の体勢の豪栄道、しっかりと引きつけ、がぶりながらの詰め。緩急・硬軟織り交ぜた貫禄勝ちで新鋭の挑戦を退けています。
一方、完全に腰が伸びきって後退するだけの照ノ富士は、初めて本場所の土俵でこの力強さを体感し、カルチャーショックのような衝撃があったはず。頭の良い力士ですから、この経験を必ず来場所の上位初挑戦場所に活かしてくれるでしょう(取り口等への詳細は今場所中2度ほど触れたとおり)。


●11-3高安(寄り切り)琴奨菊12-2○
両者とも良い角度で当たり合うも、踏み込み勝った大関が先手。左を差して返すと、バンザイの高安は右足も大きく上がってバランスを崩し、棒立ち気味。琴奨菊は右で抱えながら、がぶって猛進。高安、上手を狙うも腰をがぶりで振る動きが邪魔。最後は右に回って苦し紛れの首投げに出るも、膝を抑えながら詰められ万事休した。

○12-2白鵬(寄り切り)鶴竜10-4●
要点だけ書きます。鶴竜はこの対戦、やはり左前廻しで頭をつけて、横綱に上手を与えない形が必勝パターン。勿論、大横綱相手にそうそう形は作れませんが、それにしてもあまりにも攻めが正攻法すぎ、もう1つ、2つ横から崩す狙いの徹底と工夫が欲しかった。序盤の攻防のち、二本差しを作るも、白鵬もがっちり外四つの体勢では上手を切るのも容易でなく、崩しの仕掛けも打ちづらい。自分より大きな相手にこの形を作られると見た目以上に小さいほうには動く余地がないんですよね。最後は膠着状態から、相手十分の右(鶴竜の左)を巻き替えられ、なすすべなく寄り切られた鶴竜はこれで優勝争いから完全に脱落。

今場所は難しいなあ。2つまでは固定なので、後1つを(なしという判断も含め)どういう形にするのか。

殊勲 豪栄道、大砂嵐(勝てば)
今場所も白鵬に土をつけた豪栄道が最有力ですが、上位初挑戦で2横綱撃破の大砂嵐も資格は十二分だけに、豪栄道を敢えて技能に回す可能性も否定出来ないか。ただ、結果的に該当者なしになるのも違和感があるだけに・・・

敢闘 高安
楽日の取組編成を前に、11勝2敗で楽日までV戦線に残った力士は実績関係なく受賞対象ですから、高安で濃厚。史上最高齢での初金星を上げた豪風、初の二桁勝利をマークし、11番まで伸ばす可能性ある常幸龍にも資格はありますが、決定的な強みには欠けるか。

技能 (豪栄道)
前述通り豪栄道がスライドされる可能性は否定できない。高安は13勝での優勝なら条件付きの2賞もありえたが、今日の負けで厳しくなった。 本来の押し相撲に精彩が戻ってきた妙義龍も実績があるだけに、受賞は難しい。

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