場所終わっちゃったので、慌て気味に行きます。十両以下はまた場所後に触れるということで、残り3日分まずは幕内の相撲を2~3番ずつダダダッと。
○10-3安美錦(肩透かし)隠岐の海10-3●
トピックとしては2敗の隠岐の海が破れ、優勝争いから後退・・・ということなのですが、表現したいのはやはり安美錦の冴え渡る技能相撲。
隠岐の海は右かち上げ気味に当たって左を差す相撲ですから、立合いに動いてそれを喰うタイプではなく、逆に立合いに変化をする方でもないゆえ、安美錦にとってはシンプルに頭からガツンと当たっていきやすい相手。逆にまともに胸が合ってしまうと体力差で苦しくなってしまいますから、この日のように前傾でモチャつきながら相手の左を殺しつつ焦らして仕留めるのは理想的な流れ。細かく崩してはすかさず前に圧力をかけていきますから、隠岐の海としては完全に安美錦ペースに持ち込まれ、攻めるに攻められない。ここで左を差して起こす狙いだけではなく、ガバっと左から抱えていくくらいの攻め方をしても良いんだろうけど、安美錦が右からアレコレ仕掛けてくるから、どうしても「お付き合い」してそっちの攻防に持ち込まれてしまうんでしょうね・・・
それにしても見事なのは足の運びの上手さ。土俵の砂をざざざっと噛ませる音は録音してCDにでもしたくなるような美しさで現役力士では妙義龍と並び随一のものがありますが、もちろん決して観賞用(?)ではなく、無駄なく上半身の動きに即して連動し、この日のように後ろに目がついているかのような精度で丸みを生かし、相手の圧力を逸らしていく様は壮観の一言。彼のおじさんであり、師匠でもある伊勢ヶ濱親方も現役時にはこの芸術的な肩透かしを得意技としていましたが、安直に言えば血筋ということになるんだろうけど、もちろん決してそれだけではない努力と研鑽の賜物でもあるでしょう。
もう少し細かく検証すると途中までは半身気味に受けていたはずの体勢をぐっと左足を踏み込ませて正対加減にしつつ、右でグッと内側に力を集中させて圧力を加え、それに釣られて隠岐が前に出ようとする端(足が揃ったタイミング)を利用しての肩透かし。体を開く直前、あたかも撒き餌をするかのように右足をぶらりと浮かせる動作は勉強不足で断言できませんが、膝のクッションを使いやすくするためにやってるのかな?何にせよ観るだけでは飽きたらず自ら体を動かせて何度でも動作を真似てみたくなるほどに鮮やかな技能相撲。結果的にはこの一番の勝敗と内容が今場所の三賞受賞という点で両力士の明暗を分けることになったように思えてなりません。
●12-1白鵬(寄り切り)豪栄道7-6○
先場所前に豪栄道は白鵬という相手を必要以上に大きく見過ぎない余裕や自信が具わってきていると書いたのですが、周知の通りの結果を経て、3連勝を目指した今場所は逆に白鵬が豪栄道という存在に特別な意識や警戒を払わざるを得なくなったのかというような内容に(立場的にはどことなく千代の富士が晩年霧島を苦手としたこと(負け、勇み足で勝ち、負けでその後は対戦なく引退)に近い印象もあります)。
白鵬が仕切り線のだいぶ後ろの方に仕切ったのを見て、豪栄道は一度不成立で考える時間ができた後、「普通に行ったら懐が深いし、捕まると思ったから」と右手を出しながら左前廻しを狙う立合いに。白鵬が右を抜いて左四つになるも上手を引いてからの攻めが迷いもムダもなく一息に攻めきったことで残す腰を与えなかった。
常幸龍×白鵬、あるいは逸ノ城×豪栄道戦で書いた内容に即せば、立合いからの手の動きや左前廻しの取り方は本来あのまま出し投げ気味に左へ動き横へつくような流れに持っていかなければならないはずなところ、今回もそうはなっていないのですが、白鵬が嫌がって右を抜き、深い上手を取ったところで下手も深くできましたから、うまく下に入る形でくっつくことに成功、そこが勝敗を分けるポイントに成りました。改めて左四つでも十分に立ち回ることが出来る力量および適性を証明した一番であり、個人的には今後にわたって1つのキッカケとすべき内容ではなかったかなと思っています。
○12-1逸ノ城(はたき込み)鶴竜10-3●
逸ノ城の立合いの駆け引きについて批判がありますが、これは彼だけが悪いのではなく、今場所はもちろんここ数年の土俵で上位陣が常習的に行ってきたことのツケが回ってきたと考えた方が良い。特に過去の記事で読者の方には耳にタコが出来るほどの回数を書いてきたゆえ、あえて名指しはしませんが、近年の大相撲における「屈指の黄金カード」と呼ばれてきた対戦において、両者が毎回どのような立合いをしてきたかを考えれば、駆け出しの取的として、ないしアマチュアの立場からそれらを見てきた力士たちにいい影響を齎すはずがありませんよね。仮にこんこんと本質を説いて理解させた上で逸ノ城の「矯正」に成功したとして、対戦する上位陣があいも変わらず同じようなことを繰り返していては、結局はそっちが正しいんだということになってしまいますから。。
まあ、もろもろ含めて逸ノ城を取り巻くアレコレは来場所も話題の中心で在り続けるということですね。そして、立合いに関しては最近毎場所書いてますが、そろそろ講習会を開き、協会として最低限の改善努力を示す時期にあると思っています。
○10-3安美錦(肩透かし)隠岐の海10-3●
トピックとしては2敗の隠岐の海が破れ、優勝争いから後退・・・ということなのですが、表現したいのはやはり安美錦の冴え渡る技能相撲。
隠岐の海は右かち上げ気味に当たって左を差す相撲ですから、立合いに動いてそれを喰うタイプではなく、逆に立合いに変化をする方でもないゆえ、安美錦にとってはシンプルに頭からガツンと当たっていきやすい相手。逆にまともに胸が合ってしまうと体力差で苦しくなってしまいますから、この日のように前傾でモチャつきながら相手の左を殺しつつ焦らして仕留めるのは理想的な流れ。細かく崩してはすかさず前に圧力をかけていきますから、隠岐の海としては完全に安美錦ペースに持ち込まれ、攻めるに攻められない。ここで左を差して起こす狙いだけではなく、ガバっと左から抱えていくくらいの攻め方をしても良いんだろうけど、安美錦が右からアレコレ仕掛けてくるから、どうしても「お付き合い」してそっちの攻防に持ち込まれてしまうんでしょうね・・・
それにしても見事なのは足の運びの上手さ。土俵の砂をざざざっと噛ませる音は録音してCDにでもしたくなるような美しさで現役力士では妙義龍と並び随一のものがありますが、もちろん決して観賞用(?)ではなく、無駄なく上半身の動きに即して連動し、この日のように後ろに目がついているかのような精度で丸みを生かし、相手の圧力を逸らしていく様は壮観の一言。彼のおじさんであり、師匠でもある伊勢ヶ濱親方も現役時にはこの芸術的な肩透かしを得意技としていましたが、安直に言えば血筋ということになるんだろうけど、もちろん決してそれだけではない努力と研鑽の賜物でもあるでしょう。
もう少し細かく検証すると途中までは半身気味に受けていたはずの体勢をぐっと左足を踏み込ませて正対加減にしつつ、右でグッと内側に力を集中させて圧力を加え、それに釣られて隠岐が前に出ようとする端(足が揃ったタイミング)を利用しての肩透かし。体を開く直前、あたかも撒き餌をするかのように右足をぶらりと浮かせる動作は勉強不足で断言できませんが、膝のクッションを使いやすくするためにやってるのかな?何にせよ観るだけでは飽きたらず自ら体を動かせて何度でも動作を真似てみたくなるほどに鮮やかな技能相撲。結果的にはこの一番の勝敗と内容が今場所の三賞受賞という点で両力士の明暗を分けることになったように思えてなりません。
●12-1白鵬(寄り切り)豪栄道7-6○
先場所前に豪栄道は白鵬という相手を必要以上に大きく見過ぎない余裕や自信が具わってきていると書いたのですが、周知の通りの結果を経て、3連勝を目指した今場所は逆に白鵬が豪栄道という存在に特別な意識や警戒を払わざるを得なくなったのかというような内容に(立場的にはどことなく千代の富士が晩年霧島を苦手としたこと(負け、勇み足で勝ち、負けでその後は対戦なく引退)に近い印象もあります)。
白鵬が仕切り線のだいぶ後ろの方に仕切ったのを見て、豪栄道は一度不成立で考える時間ができた後、「普通に行ったら懐が深いし、捕まると思ったから」と右手を出しながら左前廻しを狙う立合いに。白鵬が右を抜いて左四つになるも上手を引いてからの攻めが迷いもムダもなく一息に攻めきったことで残す腰を与えなかった。
常幸龍×白鵬、あるいは逸ノ城×豪栄道戦で書いた内容に即せば、立合いからの手の動きや左前廻しの取り方は本来あのまま出し投げ気味に左へ動き横へつくような流れに持っていかなければならないはずなところ、今回もそうはなっていないのですが、白鵬が嫌がって右を抜き、深い上手を取ったところで下手も深くできましたから、うまく下に入る形でくっつくことに成功、そこが勝敗を分けるポイントに成りました。改めて左四つでも十分に立ち回ることが出来る力量および適性を証明した一番であり、個人的には今後にわたって1つのキッカケとすべき内容ではなかったかなと思っています。
○12-1逸ノ城(はたき込み)鶴竜10-3●
逸ノ城の立合いの駆け引きについて批判がありますが、これは彼だけが悪いのではなく、今場所はもちろんここ数年の土俵で上位陣が常習的に行ってきたことのツケが回ってきたと考えた方が良い。特に過去の記事で読者の方には耳にタコが出来るほどの回数を書いてきたゆえ、あえて名指しはしませんが、近年の大相撲における「屈指の黄金カード」と呼ばれてきた対戦において、両者が毎回どのような立合いをしてきたかを考えれば、駆け出しの取的として、ないしアマチュアの立場からそれらを見てきた力士たちにいい影響を齎すはずがありませんよね。仮にこんこんと本質を説いて理解させた上で逸ノ城の「矯正」に成功したとして、対戦する上位陣があいも変わらず同じようなことを繰り返していては、結局はそっちが正しいんだということになってしまいますから。。
まあ、もろもろ含めて逸ノ城を取り巻くアレコレは来場所も話題の中心で在り続けるということですね。そして、立合いに関しては最近毎場所書いてますが、そろそろ講習会を開き、協会として最低限の改善努力を示す時期にあると思っています。