土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

2016年02月

実を言えば、筆者自身も昨年中頃あたりからの成長ぶりに明確な掴みどころを得られず、論点が見つからないゆえ、個別記事の投稿も進められずにいた力士だったのですが、先場所の大活躍で取り上げられることも多く、また改めてじっくり見る機会も出来たので、逆に長文すぎて批判されかねない分量になってしまいました(汗)
ともあれ、力戦型という評価自体は本当に正しくて、現役においても有数と評しても良いレベルなのですが、ここのところの成長ぶりには、それだけでは測り得ない「隠し味」も潜んでいるように思います。


栃丸正典 出身:東京 所属:春日野 生年:平成4年 身長:171センチ 体重:160キロ

<プロフィール>
高校相撲を経験して入門(23年5月)した力士らしく、1年半ほどで新幕下を果たしますが、以後は中下位を主戦場に2年ほど足踏みを強いられる。
27年に入ってようやく頭角を現し始め、秋に初の15枚目以内及び一桁の番付に到達。そして、記憶に新しい28年初場所、東13枚目の地位で頭から6連勝し、最後の一番に敗れて新十両こそ逃したものの、楽日の決定戦を制して見事幕下優勝の栄誉を勝ち取りました。
来る春場所は、初の5枚目以内へと進出、新十両の地位がいよいよ目前にまで迫っています。




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日馬富士戦の展望は露骨に日馬富士編のコピペで済ませたという・・・また、余裕があれば新規で書き直しておきますので・・・

vs隠岐の海 10-4
横綱昇進直前の25年九州~26年春にかけて3連敗。その後お互いの怪我などで対戦から遠ざかり、1年半ぶりとなった27年秋以降は、27年九州、28年春と鶴竜が3連勝している。
とはいえ、どうしても立合いで狙った左前廻しを引っ張りこまれての左四つで苦労する状況は変わっていない。日馬富士同様に当たりの鋭さを欠き、左を浅い位置で抱えられての左おっつけから隠岐の海に出足がつけば苦杯を嘗めかねない。左が深く入って膠着しさえすれば、巻き替えの技術などに長ける鶴竜の勝機がグッと高まる。

vs豊ノ島 16-9
同門の二人だが、意外にも鶴竜が綱を張ってからの対戦は3度だけ。鶴竜は左四つでも右上手が引ければ優勢となるため、豊ノ島が立合いに左手を出してこれを嫌うことも多く、右から低く攻めて鶴竜に引かせる形を狙うものの、直近の27年九州では鶴竜が珍しく左足から出ると、豊ノ島の喉輪を右から跳ね上げていなし、豊ノ島が逆に右へいなすのにも慌てず対応。よく見ながら突き出した。
これまた日馬富士と同様(日馬富士ほどではないですが)、立合いからの流れ、土俵際とも、足の運びが整わないまま強引な左喉輪に出て外され、窮地に陥ることがあるのは気がかり。

vs栃ノ心 18-1
目下鶴竜の15連勝中。左前廻し狙いで鋭く踏み込んで食いつく形に栃ノ心が対応できていない状況も、27年九州に右がやや甘くなって二本差されかかった点を考慮したのか、28年初場所では、珍しく右で踏み込んで、右おっつけから栃ノ心に左を抜かせる格好で右を深く差し込み、食い下がりへの起点とした。いずれにしても、立合いの低さ・鋭ささえ伴えば優勢は動かない。

vs琴勇輝 
張り差しなど余計なことはやらず、突いてくる手を宛てがい宛てがいしながら、隙を見て、得意の右回り込みを生かすか、中に飛び込むという形が一番の安全策だろう。

vs宝富士 7-1
27年初場所に宝富士がこの対戦初勝利で初金星獲得。それ以降勝ち星はないが、鶴竜が圧倒したのも27年秋場所くらいで、宝富士の善戦が目立つ。
鶴竜としては、それでも立合い負けして一気に持っていかれるタイプではなく、反応の速さにも差がある分、多少受けに回っても凌ぐことができているだけに、まずは立合い一つかまして弾き、安易に組まないよう、よく見ながら突いたり押し上げたり小さく張ったりいなしたりと緩急をつけて崩していきたい。

vs髙安 10-2
稀勢の里との戦績を見ても分かる通り、どうしても体力のある左四つ力士には左を引っ張りこまれがちで取りづらそうな印象を拭えない。この対戦も7連勝中とはいえ、楽に勝った相撲は殆どなく、長引くことが多い。
四つに組んだ場合は、髙安に上手を与えないことに留意しつつ、巻き替えのタイミングをはかり、突っ張り合いの場合は、やはり攻めに緩急をつけ、相手をよく見ながら下半身の持久力勝負のような展開に持ち込みたい。

vs妙義龍 7-8
27年秋・九州と連敗中。横綱としては、まずは自らの低い踏み込み、そして突きで相手の顎を上げ、適切な距離を取った上で対処していくと言った点が攻略の手がかりとなる。

vs栃煌山 21-19
横綱昇進後も3勝4敗(うち1勝は立合いの変化)と苦手意識は一向に直らないものの、28年初は大関時代以前を含めても、そうは記憶にないような鶴竜の快勝。27年九州に敗れた相撲と比べれば、立合いの速さが歴然で、当たり負けて上体の起きた栃煌山がたまらず引いたところにつけ込んだ。速さだけを意識しすぎても正しく足が出なかったりするので必ずしも良くはないが、苦手攻略に向けた一つの取っ掛かりとなったことは確かだろう。

vs嘉風 8-4
28年初場所、対戦成績での3連敗をようやくストップさせた相撲は、立合い右かち上げ、左ハズのようにして鋭く踏み込み、左で起こしつつ右足を前に出しながら覗かせた右を差し込んでいくという攻めの流れも理想的だった。振りほどかれ、逆襲されかかるところもあったものの、立合いさえ上手く行けば二の矢からの流れは自ずと有利に傾く。終始嘉風を正面に置き、低い体勢を崩さずに冷静に捌いた。
しかし、嘉風は少し左にずれながら左でおっつけるような形も持っているだけに、ワンパターンでは逆を突かれる可能性もある。まだ潮目が変わったとまでは言えない。

vs照ノ富士 4-3
本割では連敗中。左前廻し狙いの踏み込みがやや高く、照ノ富士に右かち上げ左おっつけの形で簡単に起こされてしまっている。左前廻しが浅く取れるかどうか。

vs豪栄道 23-11
立ち合いは豪栄道が左から張るのか、鶴竜が左から張るのか、豪栄道が張る場合は鶴竜も右から合わせる場合が多く、毎場所のように立合いは不成立、両者ともに手着きなしと味気ない内容が目立つ。
27年九州は豪栄道が左から張って右も差して密着した分、鶴竜が逃げられず、28年初場所は同じ流れで距離が出来た分鶴竜の回り込みが効いた。
5回に1回もないが、四つ身に展開した際には内容の伴う力相撲となることが多く、注目したい。

vs稀勢の里 15-30
横綱昇進後もダブルスコアに近い差がなかなか埋まらない。
27年九州は稀勢の里が立ち遅れるのに乗じて、左四つ右おっつけで目の覚めるような速攻を見せたものの、28年初場所は立合い右で肩を突きながら、少し左にずれて左を差そうとする、鶴竜戦ではあまり見せなかった稀勢の里の立合いにハマって、左差しこそ防ぐものの前場所の再現を演じることはできず、以後は防戦に終止した。
鶴竜としては、とにかく踏み込みの速さに集中して、脆くなりつつある稀勢の里の重心を少しでも後ろに下げたいところ。
もっとも、稀勢の里は巧妙に立合いのタイミングをずらす作戦への対応ができるようになったので、駆け引きに頼ると逆用される可能性もある。あくまで正攻法の中にこそ体現される鋭さをもって挑みかかりたい。

vs琴奨菊 21-19
琴奨菊は27年九州、28年初場所と2場所続けて左で張る立合いも、前者はあくまでもろ差し狙いのような形で、右は差し込もうとする動き。出足はなく、差し手争いの格好ゆえ、鶴竜の上手さが十分に生きた。
それが後者では、右をガバッと抱える構え、左を差すや大きく返しながら煽りはじめ、鶴竜はあっという間に胸を合わされ何も出来なかった。立合い自体、相手に合わせて立たされてしまう格好、腰も高く、完全な失敗となってしまった。
あの猛烈な出足をまともに喰らうとどうやっても苦しく、手を出されるだけに横への動きもつけにくいが、せめて立つタイミングの修正はかけておきたい。

vs日馬富士 14-26
お互いの連続休場もあり、27年は対戦2度だけ。26年の対戦では、日馬富士が2場所連続で当たりながら左へ動いての上手投げに出たこともあり、10ヶ月ぶりの対戦となった27年九州も同じ狙い。それ以外は、お互いにまっすぐ当たりあってからの攻防で、出来るならばこちらを見たいもの。
出足ではやはり日馬富士が上回り、低く鋭い踏み込みから的確に先手を取れば、26年九州のような目覚ましい速攻へと結実。しかし、押して前に出ることは殆どない鶴竜も、日馬富士の踏み込みが弱かったり(28年初)、強くても高かったり(27年初)、低すぎて足の送りが悪かったり(26年春)すると、逃さずにいなしたり、差し込んで守りの体勢を固めたりして勝機に繋げることができる。このあたりが鶴竜を横綱の地位たらしめる所以だろう。

vs白鵬 5-36
一点だけ。白鵬側にも書いたのですが、綱取り場所でやったみたいに、右から出て右で思い切り突き放すような立合いは、対応されない限度でもう少し使う割合を増やしてみても良いんじゃないかと思うんですよね。
通常の左前廻し狙いで行くとなれば、どうしても白鵬の柔らかさ、速さ、四つ身の上手さといったところに屈し、善戦止まりというのがパターンになっています。

頭で当たりながら左へ大きく動いての投げって長いから、「日馬富士スペシャル」で通じるなら、そうした方がいいのかなあ・・・

vs栃煌山 20-8
大関時代は顔も見たくないような存在だったが、横綱昇進前後から急速に改善。
この対戦は、27年九州のように、日馬富士が左の張りで栃煌山の顎を上げ、腰を引かせて圧倒している印象が強いものの、26年九州のように右で外されると途端に劣勢に回ることもあり、多用はしていない。
27年初・夏と1場所おきで左に変わりながらの投げも出しており、警戒して踏み込みが弱くなったところで、右から鋭く踏み込んで先手を取るなど、日馬富士が栃煌山という相手を大いに警戒して、相手の隙を突くように攻めている。左からの張りもあくまでその一環だ。

vs栃ノ心 17-6
大関に上がってしばらくは大の苦手としていたものの、23年以降、本割での黒星は一度だけ。一転して取りやすい相手の一人となった。
敗れた27年春は、当たりながら左へ大きく動いて出そうとするも上手が外れて失敗。同年夏以降は、立合いでまず一つ踏み込んで、素早く左上手を引く体勢を作ることができている。自分自身で不用意にバタつくことさえなければ断然有利。

vs琴勇輝 1-0
初対戦の28年初場所は、琴勇輝が大善戦。立合い左で張った日馬富士が右差し、次いで左上手と探るのを琴勇輝が嫌って突き放し、日馬富士を土俵際まで追い込む場面も作った。相手のもろ手をしっかりと跳ね上げ、まともに引かないようにさえすれば、星を落とすとまでは考えにくいが、先場所流れの中で見せた大きな張りは、墓穴を掘ることもあるだけに使いどころには要注意。

vs髙安 9-3
金星3つを配給している苦手力士の一人。初金星のときは右の強烈なかち上げをまともに喰い、2度目は張り差しで捕まえられ、3度目は激しい張り合いの展開と、髙安の物おじしない姿勢が際立ち、苦戦の末に日馬富士が勝った相撲では、土俵を割った髙安にさらなる追い打ちをかけるなど感情をコントロールできない場面も。
お互いに怪我があったりして、28年春の対戦が1年ぶり。真っ向からの突っ張り合いになると場内も湧きそうだが、髙安は張り差し、日馬富士は27年春に出した当たりながら左へ大きく動いての投げと飛び道具も併せ持つ。

vs隠岐の海 10-3
24年九州、新横綱場所で32連勝を止められて以降は5戦負けなしだが、当たりの鋭さを欠き、上体が起きて隠岐の海の出足が利く形になると危ない。27年九州の対戦は回復途上ということで、立合いやや左にずれながら左を深く差し、胸が合わないよう、合わないように随分と慎重に構えた。
2度ほど、18番とする頭で当たりながら左へ大きく動いての投げで崩したケースもあり、そろそろ次があっても不思議ではないか。

vs碧山 9-3
やはり、横綱昇進後3度の敗戦(金星配給は1つ)を喫している難敵。碧山の突きを跳ね上げながら離れて取る展開は押し込んでも足が送れず、叩きや突き落としのタイミングにハマりやすいため、27年春や28年初のような左で張り、深く差し込んで密着する狙いが理想だが、碧山が右かち上げ気味に立って様子を見てきたときにどうか。左へ大きく動く流れは26年11月に大失敗して以来見せていない。

vs勢 7-0
まだ敗れたことはないものの、右半身からの投げで大きく揺らいだり、一気の出足に泡を喰い、かろうじて土俵際の逆転で凌いだりとさほど取り良い相手ではなさそう。
スピード差を生かして横への動きで勝機を見出すにせよ、勢は立合いの威力がいっそう増しているだけに、一歩目の精度が悪ければ危険を招きかねない。いかに立合い下から突き上げる鋭い立合いで先手を取れるかにかかっている。

vs豊ノ島 36-10
横綱昇進後、3~4回に一度負けている難敵。
右を固め、左前廻しを狙っての低い踏み込みが決まればベスト、多少当たりが高くなっても、数発突き起こしてからどちらでも(できれば左ですが)上手を引いて組み止めれば波乱はない。苦戦したものも含め、足を送らないまま無理な左喉輪攻めに出るなどの自滅が殆どなので、27年九州のカムバック以来、力任せを改め、緻密に相撲を取っている今の日馬富士なら落とす余地は低いはず。

vs嘉風 4-6
1年ぶりの対戦となった27年九州、翌初場所と日馬富士が連勝。特に初場所は、立合い右おっつけで嘉風の左差しと左へのいなしを制御、左ハズも効いて、うるさい相手の動きを止めることに成功。常に先手先手で攻めることが出来た会心の内容だった。嘉風優勢で進んだ流れに一定の歯止めがかかり、さあ次は?

vs豪栄道 27-8
豪栄道の大関昇進後は一度も負けず、関脇時代も含め8連勝中。当たりが高く、いきなり右をズブリと入れられるのが負けパターンだけに、立合いの角度さえ誤らなければ不安はない。

vs稀勢の里 33-22 
27年九州は稀勢の里の完勝、28年初は取り直し前も含め日馬富士の完勝となったが、両者の立合いはほぼ同じで、稀勢の里は左で踏み込み(27年九州から踏み込み足を右→左に変更し、踏み込みのタイミングも早めに置いている)、右で肩を付きながら左を差したい、日馬富士は右で踏み込み、左ハズで右前廻し狙い。違いは日馬富士の踏み込みにおける鋭さ・重さ・(腰の)低さに尽きる。上体だけで突っ込むような悪癖が出てしまえば、27年九州のように稀勢の里の左差しを許してしまう。
今後も、当分の間はこの点が立合いの成否における、最大のキーポイントとなるだろう。

vs琴奨菊 23-31
ここ3場所の日馬富士はいずれも立合い左で張り、27年夏はモロ差し、同九州は右差し、素早く左上手を取っての投げで連勝していたが、28年初は琴奨菊がまったく上体ブレず、下半身の構えも崩れずに出足をまともに喰い、左四つで胸を合わされて為す術がなかった。
この負け方を喫したからには、立合いの変更に出ざるを得ないか。やはり、原則は迷いなく右から鋭く踏み込み、突き起こす形だろう。

vs鶴竜 26-13
お互いの連続休場もあり、27年は対戦2度だけ。26年の対戦では、日馬富士が2場所連続で当たりながら左へ動いての上手投げに出たこともあり、10ヶ月ぶりの対戦となった27年九州も同じ狙い。それ以外は、お互いにまっすぐ当たりあってからの攻防で、出来るならばこちらを見たいもの。
出足ではやはり日馬富士が上回り、低く鋭い踏み込みから的確に先手を取れば、26年九州のような目覚ましい速攻へと結実。しかし、押して前に出ることは殆どない鶴竜も、日馬富士の踏み込みが弱かったり(28年初)、強くても高かったり(27年初)、低すぎて足の送りが悪かったり(26年春)すると、逃さずにいなしたり、差し込んで守りの体勢を固めたりして勝機に繋げることができる。このあたりが鶴竜を横綱の地位たらしめる所以だろう。

vs白鵬 20-31
白鵬のコンディションを落ち着いて観察し、ここ2場所はかましながら上手を取り左に動いて投げる戦法で勝っている。地力差自体かつてないほど接近しており、真っ向から行く際も、立合い狙い通りの踏み込みが出来れば、有利に展開させていくはずだ。

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