土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

2019年05月

※実際の東西によらず、勝者を左に記載する。

序ノ口
7-0川渕(寄り切り)渡部5-2
身軽な体で気風良い相撲を取る川渕。目指すのは師匠や阿炎・彩のような突っ張り主体の激しい押し相撲だが、この日は5番相撲同様、左四つで組む格好に。
胸が合った体勢、互いの上手も深く決め手を欠く様相も、川渕じっくり勝機を探り、相手の出足にタイミング良く反応。上手側の捻りも効かせながら腰に乗せるような投げで体を入れ替え、西土俵に寄り切った。
※この後、もうひとりの全勝力士である同部屋の伊藤が序二段隠岐の浜に敗れたため、川渕の優勝が決定


序二段優勝決定戦
栃神山(上手投げ)隠岐の浜
隠岐の浜は例によって体当たりから先制、右左とねじ込んで出るが足運びは不安定。栃神山赤房側に下がるも深い左上手で振りながら右も割り込み、その右で起こすひと手間を入れてから向正面~白房方向を伝っての上手投げに出たのが良かった。土俵際際どかったが物言いつかず、栃神山が初の各段優勝。



三段目優勝決定戦
白石(叩き込み)北勝川
白石は立合いのもろ手突き強烈、重心低く簡単に起きない北勝川の顎があっという間に上がってしまった。受ける北勝川の喉元を両手で突いてからタイミングよく左に開き、去なし気味の叩き。最後は上手出し投げに近い形で土俵に這わせた。
三段目格付出しとしては、3年前の豊山以来となるデビュー場所での優勝。新幕下昇進となる来場所は、同程度の地位に照ノ富士や狼雅が同居しそうで序盤早々目の離せない熱戦が展開されそうだ。



幕下
7-0貴ノ富士(上手投げ)千代嵐6-1
貴ノ富士は立ち合いもろ手で突いてから左を差す狙い。これを果たし、次いで右から攻めんとするが、千代嵐左で突き上げ距離を作っておいての右巻き替え急襲、左も差し直してもろ差し。貴左おっつけでひとつ圧をかけてからの左巻き替えは強引かに思え、千代はすかさず右で差し手を殺しかかるのだが、貴すぐに右へ重心を移して深い右上手、下がりざま引きずるような上手投げを放つと、拠り所を失った千代は足を送れず、懸命に左をつきつけるも及ばなかった。
好調同士、5秒ほどの攻防にいくつもの目まぐるしい前さばきの応酬が見られ非常に面白かった。両者の現状に照らせば千代嵐の善戦ということになるが、やはり勝たねば何の意味もない。惜敗の土俵に崩れ落ち、痛恨の表情を浮かべた千代の姿が印象的であった。
一方の貴ノ富士、自身初の各段優勝を手土産に、生涯幕下には落ちぬ覚悟で黒廻しを捨てると宣言した。その意気や良し!十両定着と言わず、今年中の入幕を目指してもらいたいと思う。

1豪栄道ーーー◯ーー朝乃山0
豪栄道の左はもろ差しを狙うか、上手を求めるか。どちらにせよ朝乃山は右を固めた鋭い踏み込みで大関の狙いを阻止したい。流れで早く攻められれば理想的だが、そこは逆転技も巧みな大関相手、十分に胸を合わせ、相手が動いた隙に出るのが合理的だろう。捻り系の崩しも頭に入れ、慌てずに対処したい。


3栃ノ心●-○--●鶴竜23
ともに終盤戦絶不調。鶴竜は突っ込みすぎ、栃ノ心は踏み込んでも格下相手に当たり負け、上手に手がかからない。栃の視点に立てば、踏み込みの大きさを意識するより、多少迎え撃つくらいの感覚で小さめに確実な一歩を踏んで、鶴竜の右を絞り出し左上手を取るという構想も採りうるのではないか。
鶴竜は二の矢の腰が高く、頭も下がりがちで多少押されても大丈夫…とまでは言い難いが、それくらいの
余裕で飛び込ませるイメージを持ってほしい。


12日目の結果
朝乃山×玉鷲は、放送席の感想通り「思ってたより何も出来なかった」ですね。立ち合い完全に相手の呼吸で立たれ、右ハズ左おっつけの型に嵌まって押し込まれちゃうといかにも苦しい。どうにか左から攻め返して押し返す構図に持って行きたかったのですが、劣勢に立たされて、右から右から差しにいくことに一杯一杯でした。

明生×栃ノ心は、栃ノ心完敗。立ち合いに関して、明生という人はかなり癖のある立ち方をしますから、やり慣れていない中で合わせづらいと感じたのであれば、一度嫌うという選択肢もなくはなかったのかもしれません。
ただ、片方が明らかに合わせるつもりもないのなら待ったもやむを得ないけど、そうじゃない状況で懸命に合わせようとした努力自体は無下に出来ないし、軽軽に仕切り直すべきだったとも言いたくはない。
しかし、まあ弾き飛ばされましたね。栃ノ心は踏み込んだ左足をすぐにずり下げられ、ある種その引き足も利用する形で右突き落としに行くのですが、北の富士さんも指摘していたように明生の右前廻しが効いて体を回せなかった。まっすぐ下がってしまって、もう残す腰はありませんでした。


竜電×鶴竜は、竜電がもろ差し狙いに来てくれて鶴竜としては助かりました。まだ自分の体勢が低い状況で伸び上がってくる相手をふん縛ってしまえば良いわけですから。
初挑戦ゆえ酷ではありますが、竜電には、もう少し鶴竜の嫌がる相撲は何かという発想を持って欲しかったですね。次回挑戦に期待します。



※13日目展望は、のちほど更新。


13日目展望
0朝乃山ーーーーーー栃ノ心1
右四つ左腰の新旧対決。前回の対戦は、栃ノ心が初優勝を果たす前場所の平成29年九州で、1年半ほど経っているとはいえ、地力の面ではなお栃ノ心が数段上。
相四つ同腰のミラーゲームとなった場合、格下側はどれほど「自分が十分でも相手は十二分なんだから」と指摘され、頭では理解していても、どうしたってその型に吸い込まれてしまうのが常。策を用いようにも変わり気味に立って先に上手を取るくらいしかなく、それとて深めの上手とならざるをえないのだから、結局は優位のまま寄り切るための有効手とはなり難い。
栃ノ心としては、合口の悪い豪栄道戦が(おそらく)崩され、もっともやりやすいタイプの朝乃山戦が組まれたのは自分にとって有利なこと。変わり気味に上手を取りに行くのも、格上側としてならば安全策として機能する可能性は低くないけれど、現在の精神状態でやってしまうと中途半端に動いたところを左から攻められまくって碌なことにならないような気も…
やはり間違いなく取りやすい相手に対して、これまで自分が積み上げてきたものを信じ、立ち向かっていくことに尽きるのではないか。


9髙安ーー○ーー○鶴竜12
もっか髙安の4連勝中。鶴竜としては命綱の右をうまく使えない状況が続いており、今回も大きな見どころは右を生かせるかどうか。
先場所は左差し右前廻し狙いの髙安でしたが、今場所は中盤以降体当たり一本。今日も同じ戦法で来るでしょうから、体当たりに対して低い踏み込みを崩さず、右で浅い位置を引いて早く組み付く格好を作れるか。現在の体調を考慮すれば、突っ張り合いに付き合うのはあまり得策とは言えないでしょう。
先場所は右足から踏み込んで、より右からの攻めに着手しやすい立合いを選びましたが、今回も同様の狙いを継続していくことが望ましいと考えています。

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