千代丸一樹 出身:鹿児島 生年:平成3年 所属:九重 身長:177センチ 体重:193キロ タイプ:突き押し 右四つ寄り

<立合い分析>
少し前であれば千代丸と言えばもろ手突き…ということで文章が終わっていたのだけど、ここ最近で多くのパターンを用いるようになった。
代表的なのが右を固めて体当たり気味に出るもの(本人も口にしている通り、千代大龍の当たり方と左右を反対にしているとすれば分かりやすいか)で、返り入幕を果たした昨年名古屋や秋はこの戦法がメイン。
それ以降は四つに組むことが増えたので関連性を指摘する声もあるが、狙いとしてはあくまで二の矢で突いて出る展開に持ち込むことが主眼にあり、攻め込んだ流れの中で四つになれば形も良くなることが多いゆえに「四つで成功している」というイメージも付きやすかったのかもしれない。
同系統として左を固めながら右で起こしていく立合いも持っており、相手の四つや踏み込み足なども考慮しながら使い分けているようだ。

前述のように、本人の基本戦略としてはあくまで突き押しが前提であるのだが、返り入幕を果たして以来(あるいはその少し前から)代名詞とも言える巨腹を利した四つ身での勝ちパターンが増えていくと、評論家筋も「四つの方が良い」「相撲が変わってきた」との評価を頻繁に口にし始めるようになった。
そうした声がどこまで影響しているかは分からないが、最近はまともに右を差そうとする狙いをはじめ、左で張っての右差し狙い、或いはやや左にずれて左上手を先に取らんとするものなど、相手によっては最初から四つ身にわたることを目指すような立合いも増加傾向。
勿論、元々の常套手であったもろ手突きの採用も依然多く、体当たりに応じるような出方(右を固めて行く場合なら、やや左にずれながら左から攻めるような具合)をしてきた相手の意表をついて先手を取るなど、駆け引きの多様さで幕内前半の土俵に大いなる個性を示している。
どうしても腰を低くして立つことが難しいので、体当たりをいなされたり、もろ手で出るところをはね上げられて早く攻められたりすると脆さを露呈するが、そうした場合の淡白さを補って余りある存在感を有する人であると言えそうだ。


踏み込み足:左 どのような狙いを採る場合でも、腰高で小さめに踏み込むのが特徴。体当たりの場合は多少勢い込んで当たっていくが、下半身が乱れることなく、より強く当たって弾くことが出来れば面白くなる。
手つき:元来もろ手を基本戦法としている力士らしく、先に手を付かせた上で、サッと両手を擦って立つのが理想。
呼吸:手つきの項で記した事情により、立ち上がってから腰を割るまで、腰を割ってから立つまでのいずれも遅く、自分本位の立合いが目立つ。そうしなければ取りづらい相撲であることはなるべく理解したいが、同タイプの琴勇輝と対するときなど、お互いなかなか腰を割らないことが定番で、10数秒睨み合ったままでいる場合も…


<攻防分析>
攻防の局面においても、従来千代丸の代名詞は、もろ手突きで起こしてからのタイミング良い引き技と体型の割に柔らかく土俵の丸みを生かす軽快な足さばきであった。右肩の故障に悩まされて前者を、右膝を悪くして後者を発揮することができなかった時期には十両に低迷したが、29年にはいずれも寛解し、再浮上へと結びつけた。

30年度版を作成するにおいて特筆しておかねばならないのは、やはり四つに渡った際の特徴について。
意外と言っては失礼だが、差し手がきちんと返る(地味なことだが下手を引いた上で差し手を返すことが出来るのも押し相撲の力士としては立派なものである)のは長所であり、ゆえに上手も早く、こうして胸を合わせればその太鼓腹が大いに生かされることとなる。
相手としては常に下から持ち上げられるような格好になるので苦しいし、絶妙にせり出した腹が邪魔をして廻しを引くだけでも一苦労。
最近は受けに回った土俵際で腹を巧みに相手の下に入れて残すような特技も身につけつつあるが、とにかく上体が起きず腰を据えてさえしまえば、これほど強力な武器はない。


<平成30年の見どころ>
やや人気先行の感があった「千代丸たん」も、20代後半に差し掛かったタイミングで急成長!来る大阪場所では遂に横綱・大関との対戦圏に進出してきそうだ。
相次ぐ怪我で幕下に落ちた弟・千代鳳にとっても、兄の活躍は再起に向けて何よりの発奮材料となっているだろう。一ファンとして、もう一度幕内土俵入りの舞台に兄弟揃って並ぶ日を心待ちにしている。