土俵一路

本場所中の更新に加え、場所と場所の間は花形力士の取り口分析、幕下以下有望力士の特集などを書いています。 「本場所中も本場所後も楽しめる」をコンセプトとして、マイペースかつストイックに我が道を往き続けます。                他サイト等への転載はご遠慮下さい。

Category:力士別分析 あ行 > 朝乃山

4日目の記事(※1)で述べた「変化の兆し」について、なるほど二所ノ関親方のアドバイスがあったんですね(※2)。それを聞くと、今場所から立ち合いで腰を割る際、かつての稀勢の里のように、仙骨を締めるというか、内側に入れて可動域を狭めていくような動作を取り入れていることにも合点がいきました。



この日の内容は確かに良くはない。でも、しょうがないというか、錦木が強いんですよね・・・
霧島・豊昇龍の両大関もまともに組むことは嫌って突き起こしにかかる対象、それでも起こしきれずに勝ったり負けたりしているわけですから。照ノ富士ぶん投げるしね(汗)
そういうものがない朝乃山としては、出足相撲で早くケリをつけるしかないのですが、力みすぎたか、浮き気味になって左足(一歩目)の着地が遅れ、出足をつけていこうとする三歩目が流れてしまった。
そこを錦木に突き落としながら回り込まれて、右四つで動きが止まる。腰の重い力士とこうなった場合の決め手のなさについては、過去に何度も書いている通りです。
右下手で捻って自分の上手を求めつつ、相手の下手を切ろうとする仕掛けなどはかなり良かったのですが、腰から下が連動してこないところに惜しさが滲む。巻き替えの拙さについても以前から見られる傾向で、右下手から少し振って隙間を空けるような布石も何もなく、いきなり上からねじ込みにいくので、どうしても相手に付け入られやすい。
左下手から苦し紛れに腕の力だけで打った下手投げは右膝が入りかけてかなり危なく、一つ間違えれば錦木の体重を全部受ける格好で浴びせ倒されていたかもしれない。勝ち負け以上に何もなくて本当に良かったと思います。

ということで、なかなか辛辣な書きぶりになってしまいましたが、こういう相手にこそ、流れの中というよりは、いかに立ち合いをバチッと決めていけるか。この一番に関しては考えていたことを半分も出しきれなかったと思うので、次場所こそは。立ち合いの良化を量る上では、今の幕内において一つの試金石となる相手ですし、本場所と言わず、千代の富士にとっての琴風が如く、稽古場に通い詰めてターゲット視しても良いくらいじゃないでしょうか。



※1



※2





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霧島に土とか色々トピックは多い日だったけど、朝乃山の相撲があまりに良すぎて取り上げざるをえなかった。立ち合いの鋭さもさることながら、かつてないほどに小指から左を取りに行けているので、左の前を持って引き付けるまでの一連も流れるよう。素早い右からの攻めに移り、北青鵬に上手を与えず、あっという間に東の土俵際へ追い詰めた。
これまでは、どうしても上手の取り方が親指からになっていて、重心が左を寄っている(外へ逃げている)ような具合。当たりの威力が十分に伝わらず、右腰を相手に差し出すようになってしまうので、左上手を取られやすくなっていた。
今場所の場合、浅い左を引き付けながら顔をすぐに差し手の方に向けられているので、重心を中央に寄せられているというイメージ。解説の楯山さんが「ブレが少なくなった」「頭を中心に持っていけている」と話していたのも、恐らくその趣旨だろうと思う。

北青鵬が下がりながら右半身に構えようとするところも面を合わせるというか、しっかり差し手を返し、腰を寄せて密着している。体幹を使って寄ろうとしているのもすこぶる良い意識だ。さらに、上手が伸びて引き付けきれないと見るや深い位置を引き直し、その位置に合わせて右を浅く持ち替えていた(この動きは2日目にも見られたが、左上手が深い場合の処置として理に適っている)。

あとは詰めの場面でもう少し足幅を広げて膝が外に開けば・・・という惜しさはあるが、それにしても、朝乃山には申し訳ないが、立ち合いがこれほど良化したのは嬉しい誤算というしかなく、自分と向き合った稽古を積めている証拠と言えるのではないか。今場所は勿論のこと、今年一年の飛躍に向け、是非ともこの型を徹底的に究めてもらいたい。





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いや~熱戦でしたね。明日以降の狼雅や豪ノ山もそうですが、活気溢れる若い力士たちが朝乃山に再チャレンジする機会をすぐに得られるという意味では、血も涙もない据え置きにも一定の値打ちがあろうというもの。朝乃山は大変ですが、同時に迎え撃ち甲斐も感じているのではないでしょうか。


1-2東白龍(送り倒し)朝乃山3-0
東白龍が良かったのは、何と言ってもシンプルに立合い、そこに尽きますね。
記事の一番下に先場所分と今場所分の動画を貼るので比べてもらえればと思うのですが、まず手着きの部分。前回の対戦で朝乃山が先に手を着いてくれるのは織り込み済みなので、左手を着いた後の間を先場所よりも長く曖昧に取って、呼吸を制することに成功しています。
先場所の特集でも、あるいはそれ以前からも繰り返し書いている通り、朝乃山は両手を着いて待ち、相手に焦らされた場合、どうしても上体が力んで当たりが上に抜けてしまうことがありまして、この日も例に漏れず、すっと前に足を踏み出せていた先場所に比べて角度もスピードも劣っていた。

加えて、東白龍は当たり方自体も変えています。前回はやや左前に出る具合に角度をつけて得意の右喉輪を生かすつもりが、朝乃山にいきなり右を差され、左はおっつけられて早々と苦境に陥った。
その点、今回はまっすぐ踏み込んでまっすぐ圧力をかけていく方向性。視線がきっちりと正面を見据えていて、左右の突きが続けざまに朝乃山の喉元を命中、芯を喰ったと言えるだけの攻勢に繋がりました。

立合いもろ手突きで行く力士って、何かと十把一絡げにされがちで私自身もそういう部分があったのですが、改めてこの日の東白龍を見ていると、これだけ細かく変えているのだなあと感心させられるし、何よりかき回すのではなく、真っ向から力を伝えて倒しにかかる姿勢にも称賛を尽くしたい。


・・・正直、この立合いだけでお腹いっぱいなのですが(笑)その後の展開についてもいくらか書いておくと、欲を言えば、押し込んだところで高い位置ばかりではなく、頭でかましながら低い位置を押すような攻めができれば・・・というところでしたね。
ただ、喉から上を突いて起こして、相手が反発してきたところを叩き落とすのがこの人の相撲なので、そこまで一遍に変えられないよなあ・・・とも。
その観点で言うと、いつものような、手で顔を横に向けてから反対側に動いていくという形に持ち込みきれなかったのも悔やまれるか。ちょっとそのタイミングがなかったというか、緩急つける余裕を作りきれなかったところに勝ちきれなかった原因があるのかもしれません。

その後は、東白龍が動いて引っ掻き回す、朝乃山からすれば、幕下時代に苦杯をなめてきた流動的な展開となったのですが、序盤の展開で取り疲れた東白龍に、以前の勇磨のような盛んに前へ仕掛けては崩すという手順を踏み切れる余力は残っていなかったので、基本的には追いかけるだけ。上体が突っ込みすぎず、右を差そう差そうとしながら安定感のある足運びで東に追い込んで、東白龍決死の一本背負いも、腰に乗ることなく、冷静に結び目あたりを持った左で腰を押して送り倒しました。


以上、本当に心が洗われるくらい良い相撲で、それを苦心しながら表現することの愉しさも再認識させてもらえた気がします。



参考
初場所



今場所






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