今回は初場所幕下優勝の栃丸とともに名門春日野の次世代を担う有望株、栃登です。

栃登稔 出身:石川 所属:春日野 身長:182センチ 体重:135キロ

<プロフィール>
もうデビューからは7年近くが経つ叩き上げの素材。地道に力をつけて、26年11月に新幕下昇進を果たすと、昨年上半期は上昇を続けて20枚目台へ。今度はそこから3場所連続3勝4敗で下位に後退するも、内容自体は決して悪くなかった。
50枚目台まで下げた昨年九州では、それを証明するように6番勝って一気に失地回復。自己最高の西22枚目で迎えた去る初場所でも5番勝って、春はいよいよ自身初となる15枚目以内での土俵が有力視されます。

<基本の取り口>
基本的には身体能力高く何でも出来るタイプの器用な力士ですが、型自体は右四つ。幕内の勢と同じでとにかく右を使いたい人ゆえに半身(あるいは右上手や小手で振り回すような形)になりがちで、左の使い方が課題と指摘されることも多い印象があります。
しかし、突き押しの相手にとっても正対して宛てがう構えを作ることができれば、なかなかに押しづらいタイプで、上体の柔らかさを生かし、差し身良く二本差しを果たすのも上手い。
また今時珍しい飄々とした佇まいで、1場所に1回は思い切った変化技も決めてきますから、それで墓穴を掘ることもある故あまり褒めちゃいかんが、なかなかの役者ぶりといったところではあるのかなと。
ただ、付随するポイントとして、安易に相手の手を引っ掛けたり、まともに引いてみたりということも少なからずやるので、これは明確に直していかなければならない悪癖と言わざるをえないのかなと思います。

<今後の展望>
目標にしたいのもここのところ一段と地力を高めつつある勢の取り口で、決して右四つ得意だからといって、左上手だけにこだわる必要はない。
しかし、左前廻しを狙うようにするか・両差しを狙うか・左をハズに当てるか・おっつけていくかなどの形はともかく、まずは一つしっかりと踏み込むこと。
そして、持ち前の器用さを生かし、ある程度相手の特徴に合わせながら、立合いで採る形から進展させての二の矢、すなわち左右から挟み付けて出るか・二本差し込んで揺すりながら寄り詰めるか・相手の突きを跳ね上げるか・自分から突っ張っていくか・・・ということをやっていけばいいのかなと。
どうあれ前傾の構えを拵えて、どっしり構えられる重みが出来てくれば、それこそ末は三役級というのも夢ではありません。

もっとも、これは流石に先走りすぎた将来の話でした。現状、十両を目指すにおいてもっとも必要なのは、やはり全般における鋭さ。勢も暫くの低迷を脱して幕下上位を駆け上がった時期は、勝ち味の遅さを脱し、右四つないし二本差しで前に出る速さや厳しさが段違いになっていきましたが、現状の栃登にもまったく同じ課題と視界が横たわっています。
いっそう立合いの強化に徹し、幅や技術に頼りすぎず、一気に勝負をつけるような内容が場所ごとに増えていけば、今年中の成就というのも十分見込みはあるのではないでしょうか。実際は「もう少しかかりそう」というのが本音ながら、22歳という年齢的にも開花のタイミングが早いに越したことはありません。


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