若元春港 生年:平成5年 出身:福島 所属:荒汐 身長:187㌢ 体重:145㌔
<立合い分析>
膝から下の硬さゆえに腰が下りづらい体質と向き合い、右足をやや後ろに引く斜め仕切りから平行に当たっていく独特の立ち合いを作り上げた。
左おっつけ・ハズを生かすため、左へ傾き加減に当たっていく分、右脇が甘くなったり、突いていく手が上に抜けたりしやすいのが難点。そのため、右の使い方に様々なバリエーションをつけて試行錯誤を重ねている。
6場所守った三役から陥落した6年初場所は、挑みやすさもあったか、変化の兆し。左への傾きがやや薄らいだように見え、右も引っ張り込む動作が減り、かち上げるか、かましながら肩口を突くかの2つに概ね絞られた。後の先気味に左で小さく一歩出す踏み込みも安定し、上体と腰のバランスが良いので、押し込まれているかに見えても、しっかり腰が安定、下から入る形で左四つに持ち込むことができていた。
立ち合いで強く当たることや、早く形を作ることに拘りすぎず、自分よりも大きな四つ相撲相手には前哨戦の突っ張りも用いたりしながら、有利に組み勝つためのヒントを得る場所になったのではないか。
踏み込み足:左のおっつけ(外ハズ)を生かしたいので、後ろに引いた右足からではなく、その右を軸にして左足から出る方が多い。単に左を差す場合などは右足から。取り口を比較される稀勢の里もほぼ同じような両足の使い分けをしていた。
5年九州は右足首を痛めていたため、右足踏み込みが多くなっていた。
手着き:後から手を着く場合は、右手をゆっくり下ろし、その手が着くや否やのタイミングで左をサッと下ろして立っていく。先に手を着く場合は、右手を着いて左は揺らしながら待つが、相手がなおも遅い場合は両手を着くことも。
呼吸:どちらかと言えば、相手に先に手を着かせたい。立ち遅れ気味になって、脇が空き、胸が開いたところを下から入られるケースがしばしばある。
☆主な立合い技一覧
①左おっつけ(外ハズ)
左足から踏み込む右四つの軌道を偽装して、右引っ張り込み左おっつけから左四つに持ち込むのが若元春基本の立ち合いだ。前廻しを手繰り寄せていくようなおっつけではなく、あくまで外からあてていくハズ押しのイメージ。相手が嫌がって右を抜いたところ、あるいは突いてくる相手の右を外したところへ自然と左が入って腕が返る左差しは、稀勢の里や隠岐の海らも得意としていた。
右で肩口を突く動きなどと合わせる場合は、頭からかましていく。
参考
②左差し
相手が左四つの場合は差し手争いが生じないため、当然ハナから差しにいくことになるし、根が左四つの押し相撲力士などと対する場合にも、右から引っ張り込んだりしながら左差しを狙う。
なお、立ち合いで右上手(とりわけ前廻し)を求める立ち合いが採りづらい要因については、以下リンク先を参照。
③左固める
右四つやもろ差し狙いで右を固めてくる相手には左を固めてぶつけ合う。右は引っ張り込むか上手狙い。立ち合いは右足からやや右前に出るイメージ。
④右かち上げ
出足相撲や食い下がり型の相手を起こしたい場合、喧嘩四つなどの相手に前哨戦で突き起こしたい場合などに採用。相手を起こすつもりが自分だけ伸び上がってしまうような弊害も。
⑤右突き(喉輪)
左おっつけと合わせながら、右で肩口を突いたり喉を押したりする。弊害および最近の改善ぶりについては<立ち合い分析>の項で記した通り。ベースの一つになっていくか。
⑥左突き
頻度は少ないが、髙安のようなガチガチの左四つ相手には、左で突いて右から攻めるパターンも持っている。
⑦右手前に出す
小兵相手に対する牽制などとして。相手を止めながら左差しを狙う。基本の立ち合いに自信がつけば、さほど繰り出す必要はない仕掛け。
<攻防分析>
左四つという絶対的な型を持ち、相手をがっちりと捕まえて寄り切る堂々たる取り口。師匠の蒼国来もよく似たタイプで背格好も同じくらいだが、よりスケールの大きさを感じさせる。
ただ、同じように右から抱えての左四つを得意とした稀勢の里、琴奨菊らに比べると重みや体の厚みは数段落ちるだけに、左四つになっても体負けしてしまうケースが見られる。
宮城野親方が求めるように体重があと10㌔増えれば・・・とは思うが、簡単にはいかない中、突き起こしたり、突っ張ってから差したりと立ち合いを工夫しながら、少しでも低く入ってまともに胸が合わない体勢を作るように腐心している。6年初場所の照ノ富士撃破は、その成果の一つだろう。
もう1点、投げ技系が非常に少ないのも特徴で、令和5年は上手投げ、下手投げによる勝ちが一度もなかった。怪力だからと言って何も振り回す必要はないが、大きな相手を崩すための出し投げなど、横から攻めるアイデアにはより関心を持っても良いのではないか。
突き押しに対しては、下からあてがい、あてがいしながら左を入れるのみならず、自分から猛然と突き返していく圧力も。6年初場所は10勝のうち6番が押し出し、突き出しによる勝利だった(押し出しによる白星が5番あったのは幕内昇進後最多)。
反面、受けて腰が立つとまともに叩く癖があり、(うっちゃり腰はあるものの)膝から下の硬さがゆえに前後の崩しに対する脆さも否めない。阿炎、霧島との対戦はこの負け方が多く、大いに苦手としている。
体力負け系が3前後、突き押しに対する負けが2前後くらい、そこに霧島、豊昇龍も絡んで5つ前後負けるのが、大関昇進に向けて突き抜けきれなかっった昨年のパターン。この点を踏まえつつ、大関再挑戦の令和6年を見ていきたい。
☆得意技一覧
①左四つ寄り
左を深く、右は横ミツあたり、両廻し引き付け、胸を合わせて盤石の寄り。
右上手は間々深いことがあり、体力勝ちできる相手ならばそれでも良いが、大兵相手には危険。かぶさるような寄り方が災いして、逆転の投げや体を入れ替えられてうっちゃり及ばず・・・という展開がある。また、左の返しが強い相手には、そもそも右引っ張り込み自体が効かないことも。
②右おっつけ・絞り
こちらは左と違って、おっつけながらの右上手が目標。先に左を差し、左下手の引きつけを生かしながら、左(差し手側)に出ていく寄り身の厳しさは師匠(蒼国来)譲り。相手の下手を切る動きと連動する形も多い。
おっつけではなく、足を止めて上からガバっと上手を求める動きが出ると、突き落とし、小手投げなどの餌食になりやすい。
③右四つ
最近の場所でまともな右四つになったのは5年秋・剣翔戦くらいだが、左上手を引いて、相手の上手を切り、左四つ時にはあまり現れない出し投げからの崩しも入れながら苦手の巨漢を上手く崩していた。右四つだからといって全然力が出ないわけではないし、あえて右四つに組んでからの左巻き替えなどをレパートリーに加えてみても面白いのでは。
④あてがい
突いてくる相手の手を外ハズ気味に外しながら左を差し込んでいく。左が主だが、右からも出せるし、両側から挟みつける具合にも。ハズにかかったまま押し上げる格好になることも。
⑤突っ張り・喉輪
離れた展開の中、左あてがいから左を差すことだけに意識を傾けすぎず、右で突いて左右のバランスを取る動きも多い。右で突いて隙間を空けたところへ左を差し入れようとする。
相手が怯んだり、嫌がってちょっと引いたりすればグイグイ前へ出ていくことも。攻め込んだ土俵際で廻しを離して突きに替える押し出しも多い。
⑥いなし(突き落とし)
突っ張り合いの展開で、相手が前がかりになったところを主に左からいなす。左あてがいが、いなしの動きとなって泳がせることも。
⑦叩き・肩透かし・首捻り
⑤の延長線上で用いる叩きもある(弊害は<攻防分析>の項を参照)のだが、左を差した状態でやや首捻り気味に相手を呼び込むような動きを出すことも。あまり良い癖ではない。
⑧廻し切る
おっつけの項で記したように、どちらかと言えば下手を切る動きが印象的。廻しを切ったらすぐに仕掛けるのが鉄則ではあるのだが、時折攻め急ぎとなってしまうことも。
⑨うっちゃり
以下リンク先を参照。幕内で通算5回決めており、「うっちゃり元春」の名も。5年夏北青鵬戦が鮮烈だが、最近は看破されて決まらず、怪我の心配が先立つ。
⑩外掛け
6年初場所の照ノ富士撃ちに一役買っていた技術。あまり多くは見せないが、タイプ的に増やしてもいい。掛け投げで跳ね上げられないよう、足元へ引くような動きもできる。
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<立合い分析>
膝から下の硬さゆえに腰が下りづらい体質と向き合い、右足をやや後ろに引く斜め仕切りから平行に当たっていく独特の立ち合いを作り上げた。
左おっつけ・ハズを生かすため、左へ傾き加減に当たっていく分、右脇が甘くなったり、突いていく手が上に抜けたりしやすいのが難点。そのため、右の使い方に様々なバリエーションをつけて試行錯誤を重ねている。
6場所守った三役から陥落した6年初場所は、挑みやすさもあったか、変化の兆し。左への傾きがやや薄らいだように見え、右も引っ張り込む動作が減り、かち上げるか、かましながら肩口を突くかの2つに概ね絞られた。後の先気味に左で小さく一歩出す踏み込みも安定し、上体と腰のバランスが良いので、押し込まれているかに見えても、しっかり腰が安定、下から入る形で左四つに持ち込むことができていた。
立ち合いで強く当たることや、早く形を作ることに拘りすぎず、自分よりも大きな四つ相撲相手には前哨戦の突っ張りも用いたりしながら、有利に組み勝つためのヒントを得る場所になったのではないか。
踏み込み足:左のおっつけ(外ハズ)を生かしたいので、後ろに引いた右足からではなく、その右を軸にして左足から出る方が多い。単に左を差す場合などは右足から。取り口を比較される稀勢の里もほぼ同じような両足の使い分けをしていた。
5年九州は右足首を痛めていたため、右足踏み込みが多くなっていた。
手着き:後から手を着く場合は、右手をゆっくり下ろし、その手が着くや否やのタイミングで左をサッと下ろして立っていく。先に手を着く場合は、右手を着いて左は揺らしながら待つが、相手がなおも遅い場合は両手を着くことも。
呼吸:どちらかと言えば、相手に先に手を着かせたい。立ち遅れ気味になって、脇が空き、胸が開いたところを下から入られるケースがしばしばある。
☆主な立合い技一覧
①左おっつけ(外ハズ)
左足から踏み込む右四つの軌道を偽装して、右引っ張り込み左おっつけから左四つに持ち込むのが若元春基本の立ち合いだ。前廻しを手繰り寄せていくようなおっつけではなく、あくまで外からあてていくハズ押しのイメージ。相手が嫌がって右を抜いたところ、あるいは突いてくる相手の右を外したところへ自然と左が入って腕が返る左差しは、稀勢の里や隠岐の海らも得意としていた。
右で肩口を突く動きなどと合わせる場合は、頭からかましていく。
参考
②左差し
相手が左四つの場合は差し手争いが生じないため、当然ハナから差しにいくことになるし、根が左四つの押し相撲力士などと対する場合にも、右から引っ張り込んだりしながら左差しを狙う。
なお、立ち合いで右上手(とりわけ前廻し)を求める立ち合いが採りづらい要因については、以下リンク先を参照。
③左固める
右四つやもろ差し狙いで右を固めてくる相手には左を固めてぶつけ合う。右は引っ張り込むか上手狙い。立ち合いは右足からやや右前に出るイメージ。
④右かち上げ
出足相撲や食い下がり型の相手を起こしたい場合、喧嘩四つなどの相手に前哨戦で突き起こしたい場合などに採用。相手を起こすつもりが自分だけ伸び上がってしまうような弊害も。
⑤右突き(喉輪)
左おっつけと合わせながら、右で肩口を突いたり喉を押したりする。弊害および最近の改善ぶりについては<立ち合い分析>の項で記した通り。ベースの一つになっていくか。
⑥左突き
頻度は少ないが、髙安のようなガチガチの左四つ相手には、左で突いて右から攻めるパターンも持っている。
⑦右手前に出す
小兵相手に対する牽制などとして。相手を止めながら左差しを狙う。基本の立ち合いに自信がつけば、さほど繰り出す必要はない仕掛け。
<攻防分析>
左四つという絶対的な型を持ち、相手をがっちりと捕まえて寄り切る堂々たる取り口。師匠の蒼国来もよく似たタイプで背格好も同じくらいだが、よりスケールの大きさを感じさせる。
ただ、同じように右から抱えての左四つを得意とした稀勢の里、琴奨菊らに比べると重みや体の厚みは数段落ちるだけに、左四つになっても体負けしてしまうケースが見られる。
宮城野親方が求めるように体重があと10㌔増えれば・・・とは思うが、簡単にはいかない中、突き起こしたり、突っ張ってから差したりと立ち合いを工夫しながら、少しでも低く入ってまともに胸が合わない体勢を作るように腐心している。6年初場所の照ノ富士撃破は、その成果の一つだろう。
もう1点、投げ技系が非常に少ないのも特徴で、令和5年は上手投げ、下手投げによる勝ちが一度もなかった。怪力だからと言って何も振り回す必要はないが、大きな相手を崩すための出し投げなど、横から攻めるアイデアにはより関心を持っても良いのではないか。
突き押しに対しては、下からあてがい、あてがいしながら左を入れるのみならず、自分から猛然と突き返していく圧力も。6年初場所は10勝のうち6番が押し出し、突き出しによる勝利だった(押し出しによる白星が5番あったのは幕内昇進後最多)。
反面、受けて腰が立つとまともに叩く癖があり、(うっちゃり腰はあるものの)膝から下の硬さがゆえに前後の崩しに対する脆さも否めない。阿炎、霧島との対戦はこの負け方が多く、大いに苦手としている。
体力負け系が3前後、突き押しに対する負けが2前後くらい、そこに霧島、豊昇龍も絡んで5つ前後負けるのが、大関昇進に向けて突き抜けきれなかっった昨年のパターン。この点を踏まえつつ、大関再挑戦の令和6年を見ていきたい。
☆得意技一覧
①左四つ寄り
左を深く、右は横ミツあたり、両廻し引き付け、胸を合わせて盤石の寄り。
右上手は間々深いことがあり、体力勝ちできる相手ならばそれでも良いが、大兵相手には危険。かぶさるような寄り方が災いして、逆転の投げや体を入れ替えられてうっちゃり及ばず・・・という展開がある。また、左の返しが強い相手には、そもそも右引っ張り込み自体が効かないことも。
②右おっつけ・絞り
こちらは左と違って、おっつけながらの右上手が目標。先に左を差し、左下手の引きつけを生かしながら、左(差し手側)に出ていく寄り身の厳しさは師匠(蒼国来)譲り。相手の下手を切る動きと連動する形も多い。
おっつけではなく、足を止めて上からガバっと上手を求める動きが出ると、突き落とし、小手投げなどの餌食になりやすい。
③右四つ
最近の場所でまともな右四つになったのは5年秋・剣翔戦くらいだが、左上手を引いて、相手の上手を切り、左四つ時にはあまり現れない出し投げからの崩しも入れながら苦手の巨漢を上手く崩していた。右四つだからといって全然力が出ないわけではないし、あえて右四つに組んでからの左巻き替えなどをレパートリーに加えてみても面白いのでは。
④あてがい
突いてくる相手の手を外ハズ気味に外しながら左を差し込んでいく。左が主だが、右からも出せるし、両側から挟みつける具合にも。ハズにかかったまま押し上げる格好になることも。
⑤突っ張り・喉輪
離れた展開の中、左あてがいから左を差すことだけに意識を傾けすぎず、右で突いて左右のバランスを取る動きも多い。右で突いて隙間を空けたところへ左を差し入れようとする。
相手が怯んだり、嫌がってちょっと引いたりすればグイグイ前へ出ていくことも。攻め込んだ土俵際で廻しを離して突きに替える押し出しも多い。
⑥いなし(突き落とし)
突っ張り合いの展開で、相手が前がかりになったところを主に左からいなす。左あてがいが、いなしの動きとなって泳がせることも。
⑦叩き・肩透かし・首捻り
⑤の延長線上で用いる叩きもある(弊害は<攻防分析>の項を参照)のだが、左を差した状態でやや首捻り気味に相手を呼び込むような動きを出すことも。あまり良い癖ではない。
⑧廻し切る
おっつけの項で記したように、どちらかと言えば下手を切る動きが印象的。廻しを切ったらすぐに仕掛けるのが鉄則ではあるのだが、時折攻め急ぎとなってしまうことも。
⑨うっちゃり
以下リンク先を参照。幕内で通算5回決めており、「うっちゃり元春」の名も。5年夏北青鵬戦が鮮烈だが、最近は看破されて決まらず、怪我の心配が先立つ。
⑩外掛け
6年初場所の照ノ富士撃ちに一役買っていた技術。あまり多くは見せないが、タイプ的に増やしてもいい。掛け投げで跳ね上げられないよう、足元へ引くような動きもできる。
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